停電が起きてしまったら困るという設備は日常生活において増加している。オンラインサーバや病院の医療装置など停電が起きること自体が許されないという設備は、重要度も高く、社会的な混乱を招く可能性もある。
停電が発生した場合でも、重要な設備だけに電源を途切れることなく送ることができる「電源の保険」も言い換えることもできる無停電電源装置(UPS)について解説する。
UPS(無停電電源装置)とは?
UPS(無停電電源装置)とは、文字通り停電しない電源である。
しかし、実際に停電しない電源というのは存在しない。
どのようなことかと言うと、100Vコンセントなどの商用電源が停電した際に、瞬断を起こすことなくバッテリからの電源供給に切り替わる電源措置のことを、一般的には無停電電源装置(UPS)と呼ぶ。
UPSの構造
UPSの構造は、大きく分けて電源の入力部分、バッテリ部分、電源の出力部分、停電時の切り替え制御回路に分類される。
電源の入力部分は、商用電源の入力を行い、出力を行う部分と、バッテリの充電を行う部分へと供給する部分を指す。商用電源の電圧や単相か三相かという電源種別によっても構造が異なるのが特徴だ。
バッテリ部分は電源の入力部分からの入力を行い、バッテリの充電を行ったり、停電時の電源供給を行ったりする部分だ。
バッテリは、停電時に電源を供給するため、通常時は常に充電状態となる。バッテリの容量は停電時の電源供給可能時間によって異なるため、計画時に検討が必要だ。
電源の出力部分は、商用電源からの供給か、バッテリからの供給かを認識して供給する部分となる。
バッテリからの供給は商用電源よりも安定していない場合も多いので、電圧の安定回路が入っている場合もある。停電時の切り替え制御回路は、UPSにとって最も重要な部分の一つだ。
通常、人の手で停電を検知してバッテリの供給に切り替える場合、必ず一時的に停電が発生する。
しかし、UPSはこの切り替え制御回路による制御のため、出力部分からの電源供給は止まることなくバッテリからの供給に切り替わる。
バッテリでの電源供給が保持されている間に商用電源が停電復旧すると、再び供給を止めることなく商用電源供給に復帰する。
UPSはどんな時に必要?
UPSが必要な設備は、代表的な例では年々増加しているデータセンターなどのIT関連設備だ。
こうしたデータセンターでは、停電が起きてもサーバを稼働し続けなければならないため、電源供給がストップすることは許されない。
他にも、電源の供給が止められない病院などの医療機関や重要なデータをやりとりしているサーバなどの一部にUPSを取り付けて停電に備えるという設備構築が行われている場合が多い。
UPSは、電源の供給ストップが即座に致命的な影響が発生するような設備に対して極めて有効な設備だ。
UPSの代表的なメーカー
UPSの代表的なメーカーは以下のような会社だ。主に電機メーカーでの製造が多い。
オムロン
リレーなどのFA機器が強い産業用電気機器メーカー。
リーズナブルなラインナップが大きな特徴だ。
サンケン電気
主にNTT関係の通信設備での強みを持つメーカー。
信頼性の高いUPSが特徴だ。
三菱電機
総合電機メーカーだが、PLC(プログラマブルコントローラ)やインバータなどのFA機器を製造を行っており、PLCでは国内トップシェアブランドだ。
こうした産業用FA機器などにも停電することができないような設備があるため、UPSもラインナップとして取り揃えている。
APC
アメリカの代表的なUPSメーカー。
ITに関してUPSの需要があったアメリカで、古くからUPSの製造を行っている老舗メーカーだ。UPSといえばAPCとイメージしている人も多いぐらい、業界では定着している。
まとめ ~停電しても電源を供給したいという需要は年々増え続けている~
UPSは停電しても電源を止められないという重要設備に対する需要があり、その需要は年々増加している。
IoTなどでサーバにデータを蓄積するという新たな需要もあり、データセンターの数は年々増え続けている。それに追従する形でUPSの需要も増えてきているというのが、近年の状況だ。
停電をさせないという重責を担ったUPSは、今後も災害やもしもの時の停電時に、停電できない設備を守ってくれる「電源の保険」と言えるだろう。