日本の社会保障制度に関する意思決定に関わる機関である社会保障制度改革推進会議・社会保障審議会という二組織の概要、立ち位置についてまとめる。社会保障制度改革推進会議は「社会保障の税の一体改革」の枠組みの元で中長期的・分野横断的に社会保障について検討するのに対し、社会保障審議会は専門的、分野特化的な観点から社会保障問題について検討する。
はじめに
今回は、介護制度の理解を深める一助として、日本の社会保障制度の意思決定に関わる機関である社会保障制度改革推進会議・社会保障審議会について、その役割・立ち位置等を整理する。
社会保障制度改革推進会議
社会保障制度改革推進会議は、「受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図る」ための会議とされる。(持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律第18条)。同会議は内閣に設置される(同条)。
背景
平成24年度からの「社会保障と税の一体改革」が推進されてきた中で、社会保障制度 改革の全体像及び進め方を明らかにするための「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」が 2013(平成 25)年 10月に国会に提出され、同年 12 月に成立・施行された。同法によって設置されたのが社会保障制度改革推進会議である。
所掌事務
- 中長期的に受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革について総合的に検討を行い、その結果に基づき、内閣総理大臣に意見を述べること。
- 内閣総理大臣の諮問に応じ、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革について調査審議し、その結果に基づき、内閣総理大臣に意見を述べること。
メンバー
委員は20人以内で、優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
社会保障審議会
社会保障審議会は、厚生労働省に設置されている審議会である。同審議会は2001年の中央省庁再編に伴って、厚生労働省設置法第6条第1項に基づき設置された。同審議会には分野ごとの部会・分科会が置かれており、介護関係の部会として介護保険部会・介護給付費分科会が設置されている。
背景
中央省庁再編の際、旧厚生省の人口問題審議会、厚生統計協議会、医療審議会、中央社会福祉審議会、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会、医療保険福祉審議会、年金審議会の社会保障関係の8審議会の整理合理化が行われ、その結果として社会保障審議会が発足した。
所掌事務
- 社会保障に関する重要事項の調査審議。
- 人口問題に関する重要事項の調査審議。
- 厚生労働大臣又は関係行政機関へ意見を述べること。
- 社会福祉法、介護保険法、介護保険法施行法の規定によりその権限に属させられた事項の処理(ここでは介護関連の法律のみ記載)。
メンバー
委員は30人以内で、学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する(社会保障審議会令第1,2条)。
両組織の立ち位置
社会保障制度改革推進会議・社会保障審議会それぞれの立ち位置としては、以下のように定義することが妥当と思われる。
- 社会保障制度改革推進会議は、「社会保障の税の一体改革」の枠組みの元で中長期的かつ分野横断的な視点から社会保障について検討する。
- 社会保障審議会は、より専門的、分野特化的な観点から社会保障問題について検討する。
むすび
社会保障制度改革推進会議・社会保障審議会ともに不定期で合議の議事録等をHPにアップロードしている。随時HPを確認し、介護制度をはじめとする社会保障制度の動向を注視したい。
参考
首相官邸「社会保障制度改革推進会議」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/index.html
厚生労働省「社会保障審議会(社会保障審議会)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126692.html
厚生労働省「平成13年1月に行った審議会の整理合理化について」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/seigouka.html