スプリンクラー設備とは、火災の消火を自動で行うことができる、消火能力の高い消火設備である。この記事では、スプリンクラー設備の構造と、どのような建物に設置が義務付けられているかについて解説する。
はじめに
スプリンクラー設備は、建物の天井などにとりつけられたスプリンクラーヘッドから散水することで消火を行う消火設備である。火災の感知と散水は自動的に行われる。また、火災が起きた区画全体に散水することができるため、火災の初期だけでなく中期以降にも有効に消火できる優れた消火設備である。今回は、この消火設備の仕組みを紹介するとともに、どんな建物に設置義務があるかを説明する。
スプリンクラー設備とは
スプリンクラー設備の動作の仕組みを説明する。まず、火災によって周囲の温度が上昇すると、天井に取り付けられたスプリンクラーヘッド(以下、ヘッド)もしくは、自動火災報知設備の感知器が温度上昇を感知し、ヘッドから自動で水を噴出する。ヘッドから散水が開始されたことの信号が制御盤に送られるとポンプが起動する。ポンプは専用の貯水槽から水を汲み上げてヘッドに水を送り、停止させるまで散水を続ける。以下の図は、設置例である。
図1の開放型は主に演芸場の舞台部分などに使われる。急速な火災拡大を防止するために、火災を感知すると該当区画の全てのヘッドから一斉に水を出す仕組みとなっている。また手動での起動も可能である。図2の閉鎖型は一般的に用いられるスプリンクラー設備である。ヘッド自体が配管を堰き止める栓の役目をしており、一定の温度になるとその栓が壊れるようになっている。
一点注意しなければいけないのは、スプリンクラー設備が一度作動すると、停止させるまで散水が停止されないことである。消火が終わった後、もしくは誤作動だと分かった時点で散水を止めないと水損による被害が大きくなってしまう。散水を停止できるように制御弁の位置を確認しておこう。ちなみに、制御弁が設置されている部屋の扉には下図3 のような標識がついていることが多い。
設置基準
スプリンクラー設備は消火能力が高い分、設置にかかる費用がとても大きくなる。この章ではどのような建物にスプリンクラー設備の設置義務があるのかを見ていこう。下表1 に簡単にまとめたので参考にして欲しい。ただし、スプリンクラーの設置基準はこれ以外にも細かな取り決めが多い。詳しく知りたい方は防災設備会社に相談しよう。
注目して欲しいのは、病院や要介護の老人ホームは全ての物件で設置が義務付けられている点だ(利用者数などで例外あり)。例えば一戸建てを改装した、50㎡ほどしかない老人ホームでもスプリンクラー設備の設置が必要になる。しかし、そのような小規模な施設において前章で紹介したようなスプリンクラー設備を設置するのは現実的ではない。設置に関する費用が施設の規模に対して大きくなりすぎるからだ。例えば、スプリンクラー設備を設置するには専用のポンプや水槽を設置したり、配管や天井のヘッドの設置工事をしたりする必要がある。場合によっては小規模な建物でも何百万とかかる場合も十分考えられる。よって、小規模な老人ホームなどにはパッケージ型自動消火設備や特定施設水道連結型スプリンクラー設備などを取り付けると良いだろう。これらの設備なら設置費用も安く、設置工事も比較的簡単に済む。パッケージ型自動消火設備については過去記事でも紹介しているので、そちらも参考にして欲しい。
参考
パッケージ型自動消火設備とは
まとめ
今回はスプリンクラー設備の仕組みと設置義務の基準について解説した。スプリンクラー設備は火災の感知から消火までを自動で行うことができ、消火効果も高い優秀な消火設備である。スプリンクラー設備の消火能力を十分に活かせるよう、普段から点検・整備を怠らないようにしよう。