仙台市の小学校で津波の被害をバーチャルで体験できる防災訓練が行われた。被災地の映像を遠隔地から見ることで、簡単に津波の恐ろしさを体感してもらおうという試みである。震災後10年を前に、日本のIT化と、同じ悲劇を繰り返さないためにどうするべきかを考える。
ニュース概要
2021年3月2日、宮城県仙台市の小学校で防災訓練があり、5年生の生徒36名がタブレット端末を使用して、津波の影響をバーチャルで体験した。カメラは震災遺構「荒浜小」の津波の影響を思い起こさせる24箇所に設置されており、現地に赴かなくても当時の記憶を体感できる仕組み。防災授業は東北学院大、NTT東日本宮城事業部との連携事業。市教委は昨年11月から市立小中学校の児童生徒に1人1台、タブレットの配備を進めている。
防災訓練でのICT活用
防災訓練でのICT活用は以前からも見られていたが、新型コロナの影響で、ICTの利活用の流れが一層進んだように感じられる。たとえば、渋谷区が2018年から続けている防災イベント「渋谷防災キャラバン」はリアルの開催が難しいことから、2020年はYouTubeLiveを活用し、数回に分けオンラインで開催された。また、VRを使用した津波体験や消火体験などの製品開発も積極的に行われている。
ITリテラシーが低いと言われ続けてきたわが国で、市民レベルでそれらの技術を体験する機会が増えてきたことはいい傾向のように思われる。リアル接触が封じられてたことによりその動きが加速したと言うのであれば、新型コロナの流行は一部には良い結果を与えたのかもしれない。
防災や建築業界ではIT化が著しく遅れている。その原因は人の手による作業を基本とする業界構造や、生まれながらIT技術に携わっている若者が業界に入ってこない人手不足の状況が考えられるだろう。市民レベルからIT化の突き上げが起こるようになれば、業界も必然的に変わらざるをえない状況になりうることが期待される。
3.11から10年を迎えて
2011年の東日本大震災から10年が経過した。3.11を契機に筆者は防災の世界に携わることになるのだが、その時に得た記憶や知識を忘れず、常に改善していかなければないらないと考えている。東日本大震災ではこれまで15,000人以上の方が亡くなっているが、災害大国である日本で同種被害を防ぐため、取りうる対策を施すべきであろう。
その際に大きく利用できるのはデジタル技術である。日本はIT人口が足りないと良く言われ、先進諸国と比較されることも多い。しかし、考えようによっては、伸び代があるとも言えるだろう。我々としてもデジタル技術等、有効に使える技術は惜しみなく活用し、社会に貢献できる存在でなければならないと考える。
参考
河北新報「児童ら荒浜小遺構を「見学」 仙台・高森小、防災授業でICT活用」
https://kahoku.news/articles/20210302khn000036.html