郡山市は6年ぶりにハザードマップを改訂した。2015年の水防法改正を受け、各自治体はハザードマップの改訂と地域のリスク調査に乗り出しているが、全国的にまだ十分な状況とは言えない。時間はかかるかもしれないが、やがて情報は出揃うため、施設の防災担当者をはじめ責任者は常に最新の情報を入手することを意識していただきたい。
参考
福島民友新聞「土砂災害警戒330カ所増 郡山市、ハザードマップ6年ぶり改訂」
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20210301-589897.php
ニュース概要
郡山市は、2015年以来6年ぶりに土砂災害ハザードマップを改訂した。改訂内容は、急傾斜地の崩落などが発生した際、住民に危害が生じる可能性のある「土砂災害警戒区域」の増加約330箇所等。市は同日、液状化危険度を示す「液状化ハザードマップ」を初めて作成し公表した。このハザードマップは、2018年の北海道胆振東部地震で住宅地の液状化被害を受け作成されている。
ハザードマップ改訂の困難性
記事にあるとおり、同市がハザードマップの改訂を行った背景には、想定を超す豪雨災害で被害が拡大していることを受け、政府が法改正を含めた対策を講じていることにある(情報ソース上では2015年の土砂災害防止法改正をうけとあるが、正しくは水防法ではないだろうか)。
実は、全国的にハザードマップの改訂は順調に進んでいるとは言い難い。2015年の法改正を受けて全国の自治体はそれぞれ地域の再調査とデータ収集に乗り出しているが、2020年時点で主要都市の4割が改訂できていないというデータがある。同法の改正は、ハザードマップ策定に際し、降雨の想定規模を「100~150年に1度程度」から「千年に1度程度」の「想定しうる最大規模の降雨」に見直すもので、より厳格化する内容となっている。これにより自治体が調査しなければならない範囲は拡大するとともに、委託業者の入札や予算の調整でなかなか思うようにはいかないという課題がある。
施設の防災担当者は最新情報の取得を
令和2年7月豪雨において、熊本県の特別養護老人ホームが氾濫した河川に飲み込まれ、多数の犠牲者を出したのは記憶に新しい。このときは14名もが犠牲になった。この老人ホームは以前の想定浸水レベルでは危険な浸水が見込まれておらず、水防法の改正を受けて改訂されたハザードマップで危険区域と見なされるようになっていた。改訂からは日が浅く、防災担当者をはじめ、施設管理責任者が正しくリスクを把握できていなかった可能性もある。
法改正から5年が過ぎ、今後郡山市のように新たなハザードマップを公表する市区町村が続くであろう。建物の管理責任者は自身の建物の災害リスクを改めて確認するとともに、今後の改訂が予想される場合は、常に最新の情報を把握して入居者や建物を守る対策を取るべきであろう。とくに福祉施設や医療施設は災害に弱い方が多く入居しているため、昔に制作された防災マニュアルを使用し続けている場合は、速やかに最新の情報と装備で対策を講じるべきである。
参考
福島民友新聞「土砂災害警戒330カ所増 郡山市、ハザードマップ6年ぶり改訂」
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20210301-589897.php