建物管理 最終更新日: 2023年09月17日

ニュース『救急で「搬送困難」のケース 増加続く』

「救急車が傷病者を病院に届けられない状況」が増加している。病床数が足りていない新型コロナの現状が浮かび上がる形だ。救急件数は高齢者の増加とともに年々増加傾向にあるものの、新型コロナで人と人の接触が危険であるという認識から、救急件数自体は落ち着いている。とは言え、本来救急要請をする人に高齢者が多いのも事実であり、彼等が安心して救急要請できる状況を作るため、そして医療関係者の負担を少しでも減らすため、我々一人一人の心がけが大切である。

ニュース概要

救急の搬送困難、すなわち「救急車が傷病者を病院に届けられない状況」が増加している。全国での搬送困難事例は今月11日から17日までの1週間では3,317件となっており、去年11月下旬より7週連続の増加となった。総務省消防庁は、この背景として新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、病床がひっ迫していることを挙げている。病院に搬送できずに自宅療養となるケースも報告されており、本来であれば助かる命も助からない事態に発展する懸念も捨てきれない。このような中、千葉市消防局では保健所に救急救命士を派遣し、患者の搬送先の調整に当たらせるなど独自の動きを見せている。

救急搬送について

救急件数は年々増加を続けている。以下は2021年1月現在、東京消防庁の最新データである。

図1
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/ts/ems/page01.html

この図を見るとわかるとおり、高齢者の救急搬送件数が右肩上がりで、それに付随して全体の救急搬送件数も増加している。

しかし、病床数の圧迫はこのような救急要請の増加傾向と新型コロナの流行による相乗効果によるものとは一概には言えない。当方は、東京に限って言えば、令和2年の救急出場件数は昨年比で減少すると予想している。

当方の得た情報によると、全体の救急件数は比較的落ち着いている。なぜなら、救急要請をする高齢者の絶対数が減っているからである。新型コロナの流行下では人と人の接触が危険と一般的に認知されるようになっている。新型コロナが流行し始めたその時に、皆が病院が危険と判断し、行くことをやめた。それが救急要請数にも直結しているのだ。また、下の図を見てもらえるとわかるとおり、救急要請をする人のうち、軽症者が過半数を占める。

図2
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/ts/ems/page01.html

すなわち、本来救急車を呼ぶほどの症状ではなかった人たちが、新型コロナを警戒し救急要請を控えている現状がある。中には、本来であれば「念の為入院」とされる人も、病院にいかず我慢するケースもあるだろう。これらのことから、新型コロナがいかに病床数を圧迫しているかが想像される。

救急利用の適切な判断を

参考としたニュースで挙げられている総務省消防庁による救急搬送困難状況調査は、昨年4月開始、すなわちまだ1年にも満たないデータであり、新型コロナウイルスの流行状況を鑑みれば至極当然な結果ではある。残念ながら、新型コロナが収束するにはまだ時間がかかると考えられ、今後も救急搬送困難なケースは続くであろう。

新型コロナを恐れ、病院に行くことを嫌がる高齢者の方は多いと聞く。しかし、新型コロナを抜きにして、適切な治療が必要な場面には、迅速に医療機関に受診しなければならないのも事実である。高齢者の多い福祉施設などでは、自身の体調変化を隠す人がいるかもしれない。そのような高齢者がいないかに注意を払う必要もあるだろう。

また、日夜最前線で戦う医療関係者と本当に救急車を必要としている人々のためにも、われわれ一人一人が自己管理をしっかりと行い、医療の負担にならないように自律した生活を送るべきである。救急車が必要かどうか迷った際には「#7119」という救急相談ダイヤルも大都市圏では24時間体制で整えられているため、まずそちらに連絡していただければ幸いである。

参考

NHK「救急で「搬送困難」のケース 増加続く 総務省消防庁」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210120/k10012823981000.html

東京消防庁「救急活動状況」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/ts/ems/page01.html


総務省消防庁「救急車の適正利用」
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html