グループホームの設置基準について解説する。グループホームとは、知的障害者や精神障害者、認知症高齢者などが専門スタッフの支援のもと集団で暮らす家を意味し、グループホームを設置するための基準には、人員配置に関する基準、設備に関する基準、運営に関する基準の3種類がある。グループホームの設置基準は度々議論の対象になっていて今後も変更されることが予想されるため、厚生労働省HPなどで発信される情報を随時確認したい。
はじめに
今回はグループホームの設置基準(どのような要件を満たしていれば設置できるか)について解説する。まずグループホームの概要を確認した上で、設置基準・施設基準についてそれぞれ解説する。
グループホーム概要
グループホームとは、知的障害者や精神障害者、認知症高齢者などが専門スタッフの支援のもと集団で暮らす家のことを指す。
参考
厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-089.html
グループホームには、以下の2種類がある。
1. 生活援助事業としてのグループホーム
知的障害者や精神障害者が自立的に生活出来るように組まれたグループホーム。障害者が独力で社会生活を送る上で能力の欠如している部分(金銭管理・食事・服薬など)を支援スタッフが補いながら、小規模作業所における就労等での社会生活を順調に送ることができるように配慮されている。通常は、福祉作業所の近くの民家で、5~6人で共同生活を送る。
2. 介護サービスとしてのグループホーム
認知症高齢者などが認知症の症状の進行を緩和させるため日常生活に近い形で集団生活をするグループホーム。
なお、グループホームの入居基準は以下の通り。
- 65歳以上の高齢者
- 要支援2あるいは要介護1~5の人
- 医師により認知症の診断を受けた人
- 集団生活が問題なく送れる人
- 施設の所在地と同一市区町村に住民票を持つ人
グループホームの設置基準
グループホームを設置するための基準には、①人員配置に関する基準 ②設備に関する基準 ③運営に関する基準 の3種類がある。
①人員配置に関する基準
「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下、設置基準)」によると、以下の通り。
- ユニット(共同生活住居)ごとに介護職員を配置
- 「日中の時間帯」は常勤換算方法(※注1)で利用者3人に、介護職員は1人配置
- 夜間及び深夜の時間帯:夜間及び深夜の時間帯を通じて1人以上配置(宿直は不可)
- 利用者に合わせたケアプランを作成する計画作成担当者を共同生活の住居ごとに1名以上配置
- 全計画作成担当者のうち、1名以上はケアマネージャーの資格を有していること
- 共同生活の住居ごとに管理者を設置すること
- 管理者は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで3年以上従事した経験があり、厚生労働省が規定する管理者研修を修了していること
- 特定の介護施設で認知症高齢者の介護をした経験がある者や、保険医療や福祉サービスの事業経営に携わった経験のある者で厚生労働省の定めた「認知症対応型サービス事業開設者研修」を修了している者を事業所の代表とすること
※注1 「常勤換算」とは、事業所で働いている平均職員数を表すための計算式のこと。1カ月(4週間)の稼働時間をもとに、常勤・非常勤職員の勤務時間をすべて足し、常勤職員が働いたとして何人になるかを計算する。計算式は以下の通り。
「1か月間の稼働時間数」÷「常勤の1か月間の勤務時間数」=常勤換算人数
②設備に関する基準
設置基準によると、以下の通り。
- 食堂、機能訓練室、静養室、相談室及び事務室を有するほか、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備並びに指定地域密着型通所介護の提供に必要なその他の設備及び備品等を備えていること
- 共同生活住居の入居定員は5人以上9人以下であること
- 利用者の居室は個室であり、1つの居室の床面積が7.43平方メートル以上であること
- 居間、食堂、台所、便所、洗面設備、浴室、事務室、消火設備、その他の設備等について、認知症がある方でも安全に過ごせるように配慮し、鍵のかかる棚なども完備していること
③運営基準
設置基準によると、以下の通り。
- サービス担当者会議等を通じて、利用者の心身の状況、その置かれている環境、他の保健医療サービス又は福祉サービスの利用状況等の把握に努めること
- 利用者の要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう、その目標を設定し計画的に行うこと
- 認知症対応型共同生活介護計画に基づきサービスを提供すること
- 当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行わないこと
- 身体的拘束等の適正化を図るため、次に掲げる措置を講じること
・身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を三月に一回以上開催するとともに、その結果について、介護従業者その他の従業者に周知徹底を図ること
・身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること
・介護従業者その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること
- 介護の質の評価を行うとともに、定期的に外部の者による評価を受けて、それらの結果を公表し、常にその改善を図ること
むすび
グループホームの設置基準は、社会保障審議会などでその是非が度々議論されているので、社会的事情などに応じて今後も変更されることが予想される。厚生労働省HPなどで発信される情報を随時確認したい。
参考
厚生労働省「認知症対応型共同生活介護 (認知症グループホーム)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000647295.pdf
厚生労働省「認知症対応型共同生活介護(グループホーム) の報酬・基準について(検討の方向性)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000681073.pdf