設備 最終更新日: 2023年07月02日

消防設備士試験の傾向

建設業界全般に言えることであるが、消防設備業界も人手不足だと言われている。業界全体が高齢化していることに加え、消防設備自体があまり一般的に知られることのないニッチな分野であることもその理由として考えられるであろう。今回はそんな消防設備業を行うに当たり避けては通れない資格、「消防設備士」について、その概要と昨今の傾向、合格率や難易度等に触れながら解説する。

消防設備士とは

消防設備の点検・整備・工事を仕事として行うときに必要な資格が消防設備士である。国家資格であり、対象の消防設備別に第1類から第7類まである(※1)。1類は消火栓とスプリンクラー設備、第2類は泡消火設備、第3種はガス消火設備と粉末消火設備、第4類は自動火災報知設備、第5種は避難設備、第6種は消火器、第7種は漏電火災警報器について、それぞれ分かれている。また、第1類から第5類類までの各類は、甲種と乙種に分かれている。点検・整備のみ行うことができるのが乙種であり、点検・整備・工事の全てが行うことができるのが甲種である。また、第6類と第7類に関しては乙種のみの資格がある。

(※1)消防設備士には他に「甲種特類」もある。

どのような職業の人が取得しているのか

まず、消防設備の点検・工事・整備をする会社の従業員である。また、防災関係の商品の製造・販売を行う会社の従業員も取得している人もいる。他には、比較的大きい建物の管理を行っているスタッフが取得している場合がある。例えば、デパート・ホテル・工場などの管理者や警備員などや、マンションのメンテナンス業者や管理人などである。

合格者数・合格率

では、実際にどのくらいの人たちが合格しているのか、消防試験センターが公表しているデータを見てみよう。

表1
https://www.shoubo-shiken.or.jp/org/resulth29.html
図1
https://www.shoubo-shiken.or.jp/org/resulth29.html

合格者・合格率については、毎年大きくは変動がない。(※2)まず、受験者数は甲種・乙種あわせると、8万人程度が受験する。各類をくらべると、乙種において最も受験者数が多いのが、第6類(消火器)であり、次に多いのが第4類(自動火災報知設備など)3番目に多いのが、第7類(漏電火災警報器)である。

(※2)令和2年度および令和3年度は新型コロナウイルスのための緊急事態宣言などにより、例年に比べ受験者が少かった。

図2
https://www.shoubo-shiken.or.jp/org/resulth29.html

合格率について、2015年から2019年までの推移を上のグラフに表した。このデータによると、乙種は第7類を除き30%~40%程度である。第7類は合格率がとりわけ高い。例年50%を超えていて、過去には60%を超える年もあった。

次に甲種について、下記の表とグラフを見てほしい。合格者が最も多いのが第4類で、約半数を占めている。次に第1類が多く約2割である。他類はそれぞれ10%弱の受験者数となっている。

表2
https://www.shoubo-shiken.or.jp/org/resulth29.html
図3
https://www.shoubo-shiken.or.jp/org/resulth29.html

合格率については、第1類が20%代となっている。第1類に該当する消火設備は、屋内消火栓・屋外消火栓・スプリンクラー設備・水消火設備など範囲が広いため、その分難易度が若干高いと言われている。他はおおよそ30%~40%である。

図4
https://www.shoubo-shiken.or.jp/org/resulth29.html

難易度

結論から申し上げると、消防設備士乙種に関しては難易度は高くないと言われている。

その理由としては、まず受験資格がなく誰でも受験できることである。2つ目は合格率が平均して3割を超えていることである。私が受験して感じた点は、実務経験があると難易度が下がるという点である。消防設備についてまったく知らない状態だとイメージしづらい消防設備でも、実際に触れたことがある設備だと理解しやすく問題も解きやすい。受験をお考えの方で消防設備に触れる機会がないという方は、消防設備を実際に操作している動画を観たりメーカーのパンフレット等を見てみるのが良いだろう。どちらもネットなどで検索すると無料で見られる。また、物理・化学の基礎的な問題や工具の名称などといったの工作の基礎的な問題も多く出題されるため、工業系の学校で学んだ方や理系の分野を得意とする方、他の工事士などの資格保有者であれば難易度は低いと感じるだろう。

甲類に関しては、乙種よりも難易度が高い。受験の内容としては、乙種の範囲に加えて、設計図面を見て答えたり実際に製図をする問題がある。また、実務経験、高校・大学での履修科目、前提とする資格など、一定の受験資格が必要である。しかし乙種よりは難易度が高いとはいえ、受験資格を満たす方であれば先で述べたような物理化学や工学といった基礎的な問題は簡単に解ける方も多いため、乙種を受けずに甲種を取得する方も多い。

まとめ

消防設備士は国家資格であるが、難易度は一般的に高くないと言われている。合格率は概ね3割ほどであり、合格率が高いものだと60%弱の資格もある。また、工事関係の資格などの一定の資格をお持ちの方ならば甲種の受験も可能である。とくに甲種は消防設備業界で働いている人でも意外と取得している人は多くなく、とりあえず取得しておくと実は業界の中でも稀な資格ホルダーになれたりもする。消防設備に触れる機会のあるビルメンやマンション管理会社等の業種で働く方々は取っておくと、災害時や機器トラブルの際に役に立つためおすすめである。もちろん、これから消防設備業界に携わろうとする人も同様だ。

参考

一般財団法人 消防試験研究センター
https://www.shoubo-shiken.or.jp/