設備 最終更新日: 2023年08月16日

防火シャッターとは〜本当に注意すべき点検事項〜

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防火シャッターとは防火設備のうちの一つで、建物で火災が発生した際に火炎の拡大を食い止め、建物利用者が避難する時間を稼ぐ設備である。建築基準法に基づく点検と報告の義務が建物所有者に課されているため、点検を依頼する際は実務のみならず法律周りの知見を有した専門業者の選定が必要不可欠である。度重なる人身事故により、法改正を重ねてきた背景があり、維持管理の不備は火災時のみならず日常においても重大事故を引き起こしかねない設備であるため、建物所有者及び点検実施者は生半可な気持ちで維持管理を行ってはならない設備と言えよう。

防火シャッターとは

防火シャッターとは、建物の周囲や、建物内部で発生する火災の拡大防止を目的として設置された、防火性能を有するシャッターである。防火シャッターは建築基準法第12条を根拠とする防火設備のうちの一つであり、目的が火災の拡大防止、すなわち、シャッターが閉鎖することで火炎を閉じ込めるという役割を担う。そのため厳格に定められた耐火性能が必要となり、一般的なシャッターと比べ、その厚み及び重量は大きいことが多い。

防火シャッターを含む防火設備は定期的な点検とその報告が法律によって義務付けられている。以前は点検報告の義務はなかったが、平成25年の福岡市整形外科火災という、防火設備の維持管理不足により同設備が機能しないことを要員として多数の死者が出ることなった事故を受けて、建築基準法が改正され、点検資格者による点検報告が制度化されることになったという背景がある。

また、防火シャッターには危害防止装置という、障害物に接触するとシャッターの降下が停止する機能が備わっているが、これは防火シャッターに人が挟まれるという事故が続発したことを受けて、平成17年に新たに義務付けられた機能である。点検時は、この機能が正しく作動するかどうかも確認しなければならない。

防火シャッターが必要な建物は建築基準法により定められている。しかし、防火地域や準防火地域等の都市計画法に定められる要件や、地方自治体ごとの規定も存在するため、一概に条件を述べるのは難しい。建物を施工する際は、管轄の特定行政庁や業者と綿密な打ち合わせをし、正しい場所と種類の防火設備の選択を行う必要がある。

点検の方法

防火設備全般に言えることであるが、点検時は幅広く周囲に注意する必要がある。なぜなら、点検するには防火設備を実際に起動させて、通路に壁を出すことになるため、建物利用者に危害が及ぶ可能性が大いにあるからである。この点検の性格上、一人で点検を行うのは困難である。防火シャッターの点検を行うにあたっては、連動装置という煙感知器からの信号を確認する者が1名、実際に煙感知器の炙りやシャッターを手動で起動させる者が1名、そして周囲に人が来ないかを見守る安全管理員が1名の最低でも3名の作業員はほしいところである。近頃は行政からも安全管理に関する要求は強くなっているほか、点検中に建物利用者に怪我などをさせてしまうと責任問題となるので、点検時には人足を充分に確保することが重要だろう。

防火シャッターの点検報告書の様式は地域によってまちまちであるが、以下に一例として、東京都で使われているものを提示する。

東京都の場合、以上の項目を順次埋めていく形で点検を行うことになる。点検項目は詳細に分かれているが、実際に点検するに当たり、特に注意すべきポイントを点検の流れに沿って述べる。

①周囲の状況を常に確認する

上述のとおり、防火シャッターを含む防火設備の作動点検は建物利用者にとって危険を伴う内容となっているため、常に安全管理を行う必要がある。これは点検終了まで続くことになる。また、このときシャッターの作動空間に障害物がないかよく確認すること。少しでも物があれば、作動障害として不適となるほか、点検中にシャッターや物品を破壊してしまうことにもなりかねない。

②点検口を空ける

シャッター付近の天井、もしくは壁面に点検に使用する装置を操作するためのパネルが存在しているため、そこを開放して点検に備える。壁面にあるタイプの場合、たいてい鍵がかかっているため、建物の管理人に鍵を借りるか開放を依頼する。

③煙感知器を炙る

防火シャッターには煙感知器に連動して動くものがある。この煙感知器は3種と言われるもので、点検時に作動させる方法は通常の煙感知器と同じである。この感知器の信号を別の場所にある受信器で確認することになるが、感知器に注入した煙は十分に風を送り取り除いておくこと。煙が抜けきれていないと、後々感知器がそれに反応し、勝手にシャッターが閉まることになりかねない。

④連動装置の作動状況を確認する

上述の連動装置の起動確認を点検するため、3種感知器の受信器側の操作で、連動試験を行う。連動試験を行うと実際にシャッターが動くため、このときが一番危険である。周囲の安全管理は特に注意して行うこと。

⑤危害防止装置の作動点検を行う

前述のとおり、シャッターには危害防止装置という障害物を感知しシャッターの降下を止める装置が備わっている。起動しているシャッターを下から触り、この機能が生きているかを確認する。注意点として、危害防止装置が働いたとしても、一定時間が経てばまたすぐにシャッターは降下し始めるため、危害防止装置の機能を確認し停止したからといって安心してはいけない。

⑥復旧を行う

点検口内にある手動起動装置でシャッターを操作し定位置に戻すことで点検は終了となる。手動起動装置はボタン式やチェーン式等が主要であるが、このとき気をつけなければならないのはシャッターを上げすぎてはならないことである。何も考えずにシャッターを勢いよく上昇させ続けると、シャッターのレール同士が噛んでシャッターが動かなくなることがある。こうなると復旧は一筋縄ではいかなくなるので、限界ギリギリまで上げることはおすすめしない。

防火シャッターを点検依頼する際の注意

建物所有者や管理責任者が防火シャッターの点検を業者に依頼する場合いくつか注意したほうがいいことがある。まず、法律で定められた点検資格者を抱えている業者を選ぶことである。防火設備の点検を行えるものは、一級及び二級建築士か防火設備点検資格員に限られる。防火設備全般に言えることだが、機能的に消防設備と似ているため消防設備の点検業者に依頼しがちだが、防火設備は建築基準法に基づく設備なので消防設備とは各種手続きが全く異なる。建築関連の資格を有している消防設備業者ならばよいが、資格のない消防設備業者も当然多いため、発注の際はその点を確認すること。

次に発注する側も法制度をよく理解した上で点検依頼することである。消防設備の点検依頼を受けていると、点検依頼項目の中に建築設備の点検項目が混ざっていることがままある。建築設備の点検は別の業者に依頼しているケースも多いため、二重の点検になって不要なコストをかけてしまう可能性がある。ダブルチェックと言えば聞こえはいいが、消防用設備の点検依頼を受けた業者は当然消防局への報告書を用意するが、特定行政庁への報告をするものではない。消防局側も消防設備点検結果報告書に建築設備の点検報告が記載されていたとしても無視するだけなので報告業務としては全く意味がない。

以上の点に注意し、正しく法律や制度を理解した業者の選定を行うことで、不要なコストを抑え、点検漏れ等で責任を取らされるリスクを減らすことができるだろう。