この記事では消毒用アルコール・ガソリン・灯油などの身近な危険物について、その保管方法や法令での規制について解説する。
はじめに
2020年に日本で初めて新型コロナウイルスの感染者が発表されてから、消毒用のアルコールは施設の入り口など至る所に置かれるようになった。消毒用アルコールの多くは、実は消防法で規制の対象となる危険物に該当する。また、自動車や暖房器具の燃料である、ガソリンや灯油など油類燃料も危険物である。今回は、一般に広く使われる危険物について解説するとともに、消防法や市町村条例での規制について述べる。
危険物とは
危険物とはなんであろうか。危険な物質という意味では、人体に有害な毒物や硫酸などの劇物を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。しかし、それらは今回の主題となる、消防法で言う所の危険物ではない。危険物とは何かについては消防法に規定されており、消防庁によると、一般的に次のような性質を持った物品を言うとされている。
- 火災発生の危険性が大きいもの
- 火災拡大の危険性が大きいもの
- 消火の困難性が高いもの
参考
総務省消防庁「法令 「危険物」とは?」
https://www.fdma.go.jp/laws/laws/laws003.html
要するに、火災を発生させ被害が大きくなる恐れがある物が危険物として規定されていると考えて良いだろう。ちなみに消防法で規定されている危険物は常温(20℃・1気圧)において液体もしくは固体であるものに限られており、気体のものは含まれない。つまり、都市ガスやプロパンガスは危険物には該当しない。
また、火災の危険性がある危険物なんてガソリンくらいしか思いつかないという方もいると思うのだが、実は、思いの外多くの物が危険物に該当する。下表1はその一例である。
エタノール・ガソリン・灯油の特徴
次に、危険物の特徴について解説する。前述のとおり、危険物には様々な物品が該当するのだが、今回は燃料に使われるガソリン・灯油と、消毒用アルコールやお酒に使われるエタノールついて解説する。これらの危険物は一般の建物でも多量に保管されている可能性が高いからである。
ガソリンと灯油はともに石油から抽出される物質である。ガソリンは常温で気体になりやすい。つまり、密栓していないと気体になったガソリンが周囲を漂うことになる。気体になったガソリンに炎や静電気の火花を近づけると気体に火がつき、あっという間に燃え広がる。必ず容器の蓋をしっかりと閉め、火気を近づけないように注意しよう。
灯油はガソリンほどは気化しやすくないが、高温にすると火がつきやすくなる。冷暗所で保管することが望ましい。また、布にしみこませたりすると、気化が加速され火がつきやすくなる。灯油をこぼした布などは適切に処理をしよう。
エタノールもとても気化しやすい。エタノールが燃える炎は淡い色をしており、明るい場所では見えづらい。また、ガソリンなどに比べ臭いに対して危機感を抱きにくい。溢れていたエタノールにいつの間にか火がついていたということが無いように、普段から保管管理には注意しよう。
エタノール・ガソリン・灯油の規制
危険物は扱い方によっては火災になる危険性がある。よって、消防法等によってその取り扱いに規制がかかっている。少量でも規制を受けるのかというと、そうではない。規制を受けるかどうかは保管している危険物の量によって決まる。下表2はさいたま市の例である。
表2における、「②申請が必要な数量」は消防法による規定であり、指定数量と呼ばれている。この指定数量は危険物の危険性が高いほど数量が小さく設定されている。指定数量以上の危険物を貯蔵または取り扱う場合は、消防法等によって規制を受ける。具体的には、貯蔵等をする前に市町村長などに申請をして、許可を得た施設でしか取り扱うことができない。また、指定数量以上の危険物を貯蔵等する場合は、危険物取扱者という資格者を選任し、その資格者の立会いのもと取り扱う必要がある。
また、表2における「①届出が必要な数量」は、市町村条例である火災予防条例などで規定される数量である。この数量は市町村によって違うが、多くの市町村では消防法に規定される指定数量の5分の1以上の量とされている。この数量以上を貯蔵・取扱などをすると少量危険物に指定されるため、市町村等に届出をする必要がある。例えば、500mL入りの消毒用アルコールを160個保管すると、合計で80Lとなるため、市町村等への届出が必要となる。
まとめ
危険物とは、火災を発生させ被害が大きくなる恐れがある物をいう。危険物はその量によって消防法や市町村条例等で規制を受ける。法令に従った管理をすることによって、法令違反にならないように注意してほしい。特に消毒用アルコールは、取り扱いに対してガソリンほど危険性が認知されていない。誤った保管方法をしていないか、今一度確認して頂き、事故がないように注意しよう。