設備 最終更新日: 2023年07月23日

消防設備業から見た消防行政

消防行政を鑑みると日本の消防行政の悲しい沿革がわかる。将来の消防行政の立ち位置はなおのこと難しくなるかもしれない。それは火事自体が減り、Disaster Managementという点でも自衛隊のような別途機関との仕事の割り振りが不明瞭な消防の立ち位置ゆえであろう。そのような不明瞭さは消防設備業にも残っていたように思われる。その上で、消防設備業は、「防災屋」から「消防設備業」として本当に必要な部分だけが規制に残るのかもしれない。

日本の消防行政について

消防に関して調べ物をしてたところ少し面白い論文をみつけたので紹介したい。少し古いが、日本の消防行政に関して簡単にまとめた内容の「消防行政おける専門知 ─専門知の偏在は政府間関係まで規定するのか ─」である。正直、業務に関わらねば読む機会も100%なかったであろう論文かもしれない。論文の主旨は非常にシンプルで、消防の沿革からして消防行政は分権的であり、それがゆえにポリシーメイキングが実情に沿っていないケースがあるというものである。それはそれでおっしゃる通りだと思うのだが、個人的には沿革を知る良い機会になったという点で面白いと思った。また、もう一点消防庁の訳が”the Fire and Disaster Management Agency”ということを改めて知る機会となった点がよかった。そういえば消防庁webサイトのドメインもfdmaだったが、これで謎が解けたわけである笑

参考

永田尚三「消防行政おける専門知 ─専門知の偏在は政府間関係まで規定するのか ─」社会安全学研究、創刊号、2011年
https://www.kansai-u.ac.jp/Fc_ss/common/pdf/bulletin001_10.pdf

詳細は本稿に譲るが、消防庁は元々その沿革からして悲しい存在だったようだ。結局のところ誰も求めてない省庁として生まれてきたことがよくわかる。国家権力ががっちりとその存在としての価値を認め手綱を握った警察権力と異なり、ある程度の必要性がありながらも誰もやりたがらなかった消防行政は基本的には分権の形で産み落とされた。結果としてたらい回し的になりながら、今も存在し続けている。イメージ的には警察と消防といえば子供の憧れ?の職業のような気がするが、殊、日本の行政の位置づけにおいては大きく異なるらしい。総務省消防庁と地方自治体の東京消防庁等の関係性の中で総務省消防庁の立ち位置が思ったよりも薄いこともこれに起因するらしい。個人的には総務省の概算要求の金額(令和3年度概算要求)を見て意外に少ないなぁと思っていたのも、結局ほとんどの役割が地方自治体にあるためであろう(そう考えるとやはり多い気がするが・・・、いかがであろうか)。

消防と「防災屋」

消防庁の構造の理由がわかったことはよかったが、消防庁の英訳が”the Fire and Disaster Management Agency”であることは改めて面白いなと思った。当方は消防設備管理のみを業務範囲としている認識は全くないものの、消防設備管理業に関わる多くの人は自身のことを「防災屋」ということがある。以前から「防災」と一言に行ってもあまりに広く、「消防」等は非常に部分的で「水害」や「地震」等の天災対応や、それこそコロナ等の「疫病」的なものも防災に含まれる中で消防設備管理業を「防災屋」というのが適切なのだろうか?と思っていたからだ。しかしながらこの「防災屋」的な発送はある種、監督官庁である消防庁自身も持っていたようである。それが”the Fire and Disaster Management Agency”という英訳に現れているように思う。

今後の消防はどうなるか

しかしながら、本当に消防庁は”the Fire and Disaster Management Agency”なのであろうか?というのも、昨今の火災状況(後ほど別記事でまとめてみてみたいと考えている)をみると、喜ばしいことに火災は明らかに減っているのである。これはおそらく、木造建築物に関わる防災技術の向上や都市計画運用がしっかりとなされた結果、過剰に密集した家屋がなくなっていること、そのほか鉄筋コンクリート造のマンションが増えたことなど、様々な原因によるものであろうが、この状況を鑑みると少なくとも近い将来”Fire”の標語はおろすことになるのではなかろうか。そうすると消防庁の仕事は”Disaster Management Agency”になるが、そうすると今度は自衛隊との立ち位置がわからなくなってしまう。その意味で消防庁の立ち位置はなおのこと不思議なのである。

そうするとあたかも消防庁は仕事をしていないように思われてしまうが、実際には意外に手間取る仕事が消防に集中している。それは救急行政である。簡単に言えば救急車だ。たまに話題になっているが、本来全く救急車が不要な状況ですら、救急車を呼ばれることも少なからず多く、ある種消防のリソースを無駄にしているといえよう。正直ここに消防の未来があるかと言われれば疑問ではあるのだが。

消防設備業の未来

いろいろ思いのままに記載したが、そのような中で消防設備業の立ち位置は今後どうなるのであろうか。個人的にはやはり「防災屋」から「消防設備業」となるのではなかろうか。その上でその他、設備業の一環としてその他設備業と共にまとめられるのではないかと思う。そして人口減の中で消防設備の中でも本当に必要な消防設備関連事業のみが規制下におかれるのではなかろうかと思う。やはり、消火器まで消防設備士じゃなければ設備検査できない現状は、現実的に防火管理をしていないビルが少なからずある現況を考えると今後も運用できるとは思えないのである。

参考

永田尚三「消防行政おける専門知 ─専門知の偏在は政府間関係まで規定するのか ─」社会安全学研究、創刊号、2011年
https://www.kansai-u.ac.jp/Fc_ss/common/pdf/bulletin001_10.pdf

関西大学「社会安全学研究」
https://www.kansai-u.ac.jp/Fc_ss/center/study/index.html

消防庁「令和3年度消防庁予算 概算要求について」
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/info/items/200930_soumu_1.pdf