設備 最終更新日: 2023年06月25日

非常用電源設備とは何か? その種類と設置時に規制される法律

自然災害や電力不足などで、停電が長期間続いた場合、商用電源以外に自家用設備における発電設備が必要となる。
一般的には非常用電源設備と呼ばれるが、その種類や法規制などは多岐にわたる。
多くは電源設備新設時に検討される内容ではあるが、その後の運用においても基礎知識としてどのような非常用電源設備があるのかは重要な項目になる。
今回は非常用電源設備の大きな区分と法的な位置づけについて解説する。

非常用電源設備とは何か

そもそも非常用電源設備とはどのようなものなのだろうか。
非常用電源設備と対になっているものとしては、商用電源が挙げられる。商用電源は、各地域の電力会社など電気料金を支払って電力の供給を受ける場所から電気を購入する場合の電源である。常に品質が一定の電気を供給するため、通常時は商用電源により照明や動力といった負荷設備に電気が供給されている。
それに対して、非常用電源設備は文字通り、非常時の電源設備である。具体的には災害や落雷など様々な理由で商用電源の供給が受けられなくなった場合、商用電源に代わる電気を発電機などの自家用設備で供給する設備が、非常用電源設備である。

非常用電源設備の種類

では、非常用電源設備にはどのような種類のものがあるのだろうか。
代表的な非常用電源設備は、ディーゼルエンジンやガスタービンエンジンなどを用いた内燃力発電設備だ。家庭の100V電源を供給する小型のものから、大規模ビルの数日分の電気を供給することができるような大型のものまで様々な種類の内燃力発電設備がある。
また、太陽光発電設備が普及してきた昨今では、太陽光発電設備を非常用発電設備として活用するという方法も取られている場合もある。
これからの時代は、脱炭素の観点から、水素を燃料として電気を作る燃料電池設備も非常用電源設備として設置されることが多くなっていくだろう。

非常用電源設備の法律規制

非常用電源設備には、ディーゼルエンジンやガスタービンなど軽油、灯油を用いているため、大型の設備になると、大型の燃料貯蔵タンクが必要となる。そのため消防法による規制を受ける場合がある。具体的には設置に所轄消防署に届け出、竣工検査を受ける必要があり、点検記録の届け出の必要が出てくる。
電気設備としては発電設備に分類されるため、電気事業法等の電気関連法規でも、一定の規模以上の非常用発電設備の設置には消防法同様、届け出等の対応が必要となる。
また、ディーゼル発電設備では、排気に黒煙があがるため、公害防止に関する法律により、排気フィルターなどの設置の必要もある。

太陽光発電設備や燃料電池設備を非常用電源として用いる場合も、一定容量以上の大型設備となると電気事業法による所定の届け出が必要となってくるため、注意が必要だ。

大規模ビルになると停電を検知して自動で非常用発電に切り替わる

商用電源の停電はいつ起きるかはわからない。
そのため、停電に備えて誰かが待機していて、停電時に切り替えを行うという構成は現実的ではない。
そのため、多くの大規模ビルでは、商用電源が停電すると、それを検知して自動で非常用電源を起動して所定の負荷設備に供給を行うという構成となっている。
これは受変電設備の点検時に、商用電源を停電させなければならないという場合にも有効な構成となっている。受変電設備点検時も非常用電源で電気が供給されているため、施設内の居住スペースなどは通常通りに電気を使うことが可能となる。

まとめ

水害や地震など、大規模自然災害が発生すると停電が長期化する場合が多い。
2018年の北海道地震の際には、地震の影響は局地的なものだったにもかかわらず、電力の需給バランスが崩れたことにより、北海道全域で長期間の停電が発生した。
電力小売り事業の完全自由化に伴い、電力会社以外からも電気の購入が可能となったが、その分、電力の信頼性は以前と比べると低下したという見方をしている専門家もいる。
こうした時代背景の中、非常用電源設備の重要度は年々上がっているといえる。
電力自由化以前は、商用電源はよっぽどのことがない限り、停電が長期化しないという共通認識があったためか、非常用電源設備が重要な設備としてみられていなかった。
しかし、北海道での事例などがその反証としてあげられることで、非常用電源設備への関心を引いている。

参考

内発協ニュース「自家発電設備の種類と関係法令」
https://nega.or.jp/publication/press/2014/pdf/2014_04_06.pdf

経済産業省・資源エネルギー庁「日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html