2020年年末から2021年年始にかけて電力需要の増大による電力不足の危険性が日本に差し迫っていた。電力自由化の大きな波の中で今後も電力不足やそれに伴うブラックアウトの危機はかつてなく大きくなっている。事実、すでに北海道ではブラックアウトが発生しており、このような問題対した対策は事前に準備することは必須事項であるといえよう。本稿ではBCP対策の観点に重きを置き、足元で可能な事業対策としてのUPSの導入とクラウドサービスの活用について紹介する。
目次
全国的電力不足と電力価格の高沸
以下のニュース解説をご参照いただきたい。
参考
東洋経済ONLINE「大寒波とLNG不足が直撃、電力逼迫の「異常事態」」
https://toyokeizai.net/articles/-/403804
既に周知の事実では割るが2020年年末から2021年年始にかけて日本全国が電力不足、ブラックアウトが発生しうる危機にさらされていた。kWhあたり通常10円もしない電力価格が最大250円程度まで上昇する異常事態となった次第である。
原因は上述の記事によれば寒波とLNG不足とのことであるが、いずれにせよ電力自由化の結果として需給関係の最適状況帯へ以降するにあたり、供給力への投資減少が招いた問題と考えうる。このような問題が今後起きないように何等かの対応策は確実に取られるものと考えられるが、少なくとも今回のような問題が起きる可能性が目の前にあることは明らかになったのである。
北海道で発生したブラックアウト
事実、2018年9月6日には北海道で初めてとなるブラックアウトが発生している。この際の原因は地震であったので電力の自由化と結びつけるべきではないかもしれないが、いずれにせよこのような問題はかつてよりも我々の足元に現前として迫っていることは間違いない。これが、今回のような真冬におきていたと考えるとその人的被害、社会的な被害は疑いもなく大きなものになっていたといえよう。それを考慮するならば当然ながら日々の防災対策に重きを置くべきである。一方で、こと電力のブラックアウトで問題になるのは人命などの問題は当然として、ビジネス継続性も同様である。ことコンピューター技術に頼りきりとなった現代的なビジネスにおいてはこのような停電事象への対策は必須といえよう。
BCP対策としてできること バックアップ・UPSの導入・クラウドサービスの活用
さて、本題に移るが、このような電力ブラックアウトへの対策として、中小企業はいったい何ができるであろうか。ある時ブラックアウトが生じた結果、自社のファイルサーバーのデータが全ておしゃかになった、では済まされないのがビジネスである。つまりBCPとしての対策が重要なのだ。その中で容易に考えられる対策を今回は3つ紹介したい。それらは①バックアップの徹底、②UPSの導入、クラウドサービスの活用である。それぞれについて簡単に説明を進めたい。
①バックアップの徹底
言うまでもないことではあるが、社内にファイルサーバー等を保持、運用している場合はデータの保護が必須である。物理危機は絶対に故障といった問題からは逃げられない。そうである以上、バックアップ体制をしっかりとすることが必須である。
②UPSの導入
UPSという言葉をご存知であろうか?UPSとはUninterruptible Power Supplyの略であり、無停電電源装置の事である。要は停電時の補助電源といったところだ。いざ建物全体が停電になったとしても一次的ではあるが電力供給を行えるため機器の故障等の問題を低減することができる。意外にも値段は張るが、大切なデータを保持するためと考えると導入する必要性があるのではなかろうか。詳細な内容については下記等専門のページを参照いただきたい。
参考
ITmedia「意外と知らない「UPS」の基礎知識――もしもの停電から大事なデータを守るため」
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1403/19/news118.html
③クラウドサービスの導入
最後にクラウドサービスの導入である。そもそも事業環境自体が全てクラウド上に上がっていれば①、②も必要ない。というのも設定如何ではあるがある程度はクラウドサービス側でバックアップや補助電源的サービスを当然に提供しているからである。そのためクラウド利用することで生産性を向上させるという本来の役割に加えて自動的に災害対策がある程度はできてしまうということである。当然ながら一方で、セキュリティ等の問題や課題も表出することを考えると必ずしもベストアンサーとはなりえない可能性はあるものの、こと中小企業にとっては重要な選択肢の一つとなりえるであろう。
最後に、今回はブラックアウトといった事象への対策として3つの案を紹介した。どのようなケースにせよ、それぞれの状況を加味したBCP対策が重要である。必要に応じて専門家と協議の上対策を講じてほしい。
参考
経済産業省「スポット市場価格の動向について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/029_04_02.pdf
経済産業省「日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html