介護保険について概要的に解説する。まず介護保険制度の考え方・仕組みを確認した上で、介護報酬、介護施設・事業所の種類について解説する。最後に今後の介護保険制度について注目すべき点に触れる。
介護保険制度の考え方
高齢化の進展に伴う要介護高齢者の増加・介護期間の長期化などにより介護ニーズが増加する一方で核家族化の進行する中、高齢者の介護を社会全体で支えるという理念の下、介護保険制度は創設された(1997年介護保険法成立、2000年同法施行)。 介護保険制度は、主に以下の3つを基本的な考え方として掲げている。
- 自立支援…単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立支援を目指す
- 利用者本位…利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる
- 社会保険方式…給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用
介護保険制度の仕組み
介護保険制度は、被保険者からの保険料と税金を基に全国の自治体により運営されている。被保険者としてサービスを受けるには、自治体の窓口にて受給可否の審査を受ける必要がある。認定されると1~3割(年金収入等の前年度所得によって負担の割合が異なる)の自己負担で介護サービスを受けることができる。
介護報酬について
介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者又は要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われるサービス費用のことを指す。
介護サービスを提供する事業者は、保険者である自治体にサービス費用の請求をすることでサービス費用の9割または8割の支払いを受け、サービス費用の1~3割を「利用料」として利用者から受け取る。
介護報酬の額はサービスの種別・内容、入所施設、要介護度等に応じて平均的な費用を考慮して決定される。
介護報酬には①基本報酬②加算③減算の3種類がある。
①基本報酬は、サービス・地域によって異なる「単位」を基準に決定され、サービスと地域によって定められた「単位数」に1単位当たりの単価をかけ合わせることで算出される。
②加算は、単位を「上乗せ」することである。つまり、加算があれば介護報酬の増額に繋がる。
例えば訪問介護、入浴介助、離島・豪雪地帯に事業所がある場合など、一定の場合に加算される。
③減算とは、介護保険制度に対する違反等などがあった場合にペナルティとして単位を差し引くことである。人員不足、研修未受講などが減算事由に該当する。加算とは逆に、減算は介護報酬の減額に繋がる。
介護報酬は、介護事業所・施設の経営動向や賃金・物価水準、介護現場の課題解決などを総合的に勘案して改定される(いわゆる「介護報酬改定」)。現在は介護保険事業(支援)計画に合わせて、3年に一度改定が行われている。
介護施設・事業所の種類
公的施設
民間施設
介護保険の今後
介護保険制度開設以来20年間で、65歳以上被保険者数が当初の約1.6倍に増加し、介護サービス利用者数は約3.3倍に増加している。今後ますます高齢化が進行する中で、介護保険制度の重要性が高まるのは言うまでもない。
また、介護現場における防災も無視できない状況となった。令和3年介護報酬改定により、介護施設・サービス事業所に「業務継続計画(BCP)」の作成と研修の実施が義務付けられた。自然災害や新型コロナウイルスのような感染症拡大時にも業務を継続できるか否かが重要視され、それが介護報酬に反映されるということである。
社会において介護に求められることが刻一刻と変わる状況の中で、今後も介護保険制度の動向を細かくチェックすることが求められる。
参考
厚生労働省「介護保険制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
厚生労働省「介護報酬」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/housyu/index.html
全国老人福祉施設協議会「令和3年度介護報酬改定ポータルページ」
https://www.roushikyo.or.jp/?p=we-page-menu-1-3&category=19326&key=23182&type=contents