
介護現場で活用されるICTの類型およびそのメリットについて整理する。介護分野のICTは大きく業務システム、ロボット、IoTおよびAIに類型化され、それぞれ独自のメリットがある。介護現場ごとに最も解決すべき問題は何か、それを解決できるICT技術はどれかを検討することが介護現場でのICT活用の第一歩となるはずである。
はじめに
高齢化の更なる進行、介護の担い手の減少などの近年日本を取り巻く状況の変化により、介護の現場のICT化に注目が集まっている。令和3年度の介護報酬改定においてICT活用に関する加算要件の緩和が行われるなど、今後介護分野においてますますICT推進の重要性が増すことが予想される。
今回は、介護現場で活用されるICTの類型およびそのメリットについて整理する。
介護現場のICTの類型・メリット
介護現場に導入できるICTを類型化し、その概要・メリットを整理すると、おおよそ以下のようになるだろう。
業務システム
a. 概要
手入力で行っていた業務をシステムにより代替することは、おそらく一番最初に思いつく介護ICTだろう。
たとえば、以下のような業務をシステム上で行うケースが多い。
・請求管理
・職員のシフト管理
・職員間の報告業務
・利用者のケアプラン・健康状態の管理
・各関係者との情報連携
b. 導入のメリット
・業務の効率化
最も一般的なメリットは、事務作業等業務の一部をシステム化することで業務を効率化し、職員の負担を軽減できるということだろう。
たとえば利用者の健康状態などを紙媒体ではなくチェック方式で記録システムに入力できるようにすることで、入力時間の短縮・職員間での情報共有の円滑化などが期待できる。
・利用者の状態の可視化
利用者の健康状態などをシステムに入力し可視化することで、サービスの最適化・質の向上などが期待できる。
・情報の連携の促進
介護施設と病院、訪問介護事業所などと情報の連携がしやすくなるのもメリットの一つである。
関係者間で共通のプラットフォームとなるシステムを使用すれば、利用者の情報を容易に共有できる。これは平時の業務はもちろん、災害時などの緊急事態においても重要な点である。
ロボット
a. 概要
ロボットの技術を介護の現場で活用することで、利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立てることができる。
具体的には、以下のような場面で利用できる。
参考
介護ロボットポータルサイト
http://robotcare.jp/jp/priority/index.php
・移乗介助
装着型の機器で介護者のパワーアシストを行い、移乗介助の際の腰の負担を軽減する。
・移動支援(屋外移動)
手押し車型(歩行車、シルバーカー等)の機器で高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるよう支援する。
・排泄支援
排泄物のにおいが室内に広がらないよう、排泄物を室外へ流す、又は、容器や袋に密閉して隔離する等排泄支援を行う。
・入浴支援
ロボットにより浴槽への出入り動作、浴槽をまたぎ湯船につかるまでの一連の動作を支援を支援する。
b. 導入のメリット
・肉体的負担の軽減
介護ロボットを導入すれば、たとえば利用者の体位交換など、職員にとって体力のいる業務の負担を軽減できる。
・労働環境の改善
ロボットにより介護者の業務量が減り結果的に全体の作業効率・生産性が向上することが期待できる。
・利用者の身体・精神に好影響
たとえばロボットを利用し外出を支援することで身体機能の維持・向上が期待できる。また、それにより副次的に精神的にも安定することが望める。
IoT・AI
a. 概要
家電製品などをインターネットに接続し情報を活用するIoTと、自ら学習し人間のような知能を持つとされるAIについては、介護分野においても活用が進んでいる。具体的には、以下のような活用例がある。
・見守り
たとえばセンサーやカメラのデータによって、高齢者の異常を検知するとすぐにスマートフォンやPCなどに通知を送るようにできる。
・コミュニケーション
AIを搭載したロボットが、問いかけに応えたり簡単な動作をすることで利用者のコミュニケーションを促進する。
・ケアプラン作成
個々の利用者にあった介護計画(ケアプラン)をAIが提案する、というサービスもある。AIが学習した情報を基に、利用者に最適なプランを導き出す、ということができる。
b. 導入のメリット
・業務負担の軽減
たとえば見守りロボットによって夜間の見回りなどの回数を減らすことで、介護者の業務負担の軽減を図ることができる。
・サービスの質向上
IoTやAIを随所に取り入れることでサービスの質の向上が期待できる。たとえば体温計や血圧計などで得たデータを基に最適なサービスを瞬時に提案できたり、データを蓄積しサービス改善につなげることもできる。
むすびに
介護医療現場におけるICTの利用促進は国家レベルでの急務である。実際に厚生労働省はそれを踏まえたICT導入支援事業やそれにかかわる調査を実施している。
それを踏まえるといまだICT技術の利活用は道半ばというのが実態であろう。導入に動いている介護現場が大半であることが想像できるが、そのICT技術を最大限活用できていてかつそのメリットを感じているところはそう多くはない、というのが実情ではないだろうか。上述の通りICTの可能性を鑑みるとその適用範囲は少なからず今後も広がっていくことはほぼ疑いない一方で、技術的な問題や社会実装上の課題が大きな課題となっている点は疑いなかろう。
まずは介護現場ごとに最も解決すべき問題は何か、それを解決できるICT技術はどれかを検討することが介護現場でのICT活用の第一歩となるはずである。業務改善、サービスの質向上、BCP作成などに役立てるために、今後も介護現場でのICT活用事例に注目したい。
参考
厚生労働省「介護現場におけるICTの利用促進」
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html