建物管理 最終更新日: 2023年09月17日

建物管理業務と設備管理業務について

不動産賃貸管理業務の中における建物管理業務と建物や消防設備など設備管理業務の位置づけを説明する。その上で管理会社委託や自主管理のはざまで管理のありようが変化する時代において、どのような管理を行うべきかを検討する。

不動産大家業の変遷 第四世代に向けて

不動産大家業は古くからある事業であるが、昨今大きく変貌遂げている。それは①地主を中心とした第一世代、②医者等の士業を中心とした第二世代、③サラリーマンでも区分マンション投資やアパート投資が一般化した第三世代という変化に代表される。所謂、2013年頃から始まった黒田日銀総裁による極度の金融緩和を受けてうまれたのが第三世代であり、それは大きな変化であったが、スルガ・レオパレスショックを受け融資の道が閉ざされたことから再度新たな変化が生じつつある。それは第三世代等で生じた兼業大家の本業大家化であり、この集団が、個人事業主として大家業の専門化への道を進み始めた第四世代といってよかろう。この世代では、競争の激化、収益性の低減等を踏まえ今まで深く考えずに頼んできた管理業務のさらなる高度化が求められる。とくに設備管理等の位置づけが重要であろう。

不動産賃貸業務と設備管理業務の位置づけ

あらためて設備管理業務の位置づけを確認したい。本稿では、不動産賃貸管理業務の範囲を所謂レジデンス向けのマンション、アパートや民泊とする。それを前提として、一般的に、不動産賃貸事業は大きく2つの事業からなる。①プロパティマネジメント業務と②建物管理業務である。前者が所謂客付けや契約、集金業務であるのに対して、後者は文字通り施設等のメンテナンス業務に分けられる。後者はさらに用途によりビルマネジメントやマンションマネジメント等に分割されることもあるが、管理種類でわけるならば①清掃業務②設備管理業務③警備報告業務に分けられよう。消防といった設備管理はその中に位置づけられ、定義にもよるが所謂施設管理の一貫とみなされ、建物メンテナンスの中でも法的要請があることなどを勘案すると比較的専門性が高い領域に属する。

図1
芝辻保宏『賃貸マンションVS自主管理』引用の上Ground Toolsにて一部改変

賃貸管理業務が高度化する時代に向けて

上述した通り現在の不動産賃貸業は大きな変化のさなかにいる。その中で不動産管理会社にに丸投げで委託していた不動産賃貸業を変化させていく要請は強くなりつつあるといえよう。すなわち、賃貸管理、建物管理を全て管理会社に委託して費用を払うだけでなく、必要に応じて賃貸管理は委託し建物管理は別途自身で行う。もしくは、建物管理の中でも清掃業務はコスト低減のために自身で行うが設備管理の点検業務は委託するということである。

図1
芝辻保宏『賃貸マンションVS自主管理』引用の上Ground Toolsにて一部改変

これは民泊を含めた賃貸サービスにおいてより重要化するであろう。収益性がより厳しく求められることになる事業性が強い、所謂第四世代にとってこれをしっかりとコントロールすることがますます重要になり、その中で自身の強みの明確化と、経験値が高く、信頼できるパートナー関係の構築にさらなる重きが置かれのではなかろうか。

参考

畑中学『不動産業界のしくみとビジネスがしっくりわかる本』技術評論社
芝辻保宏『賃貸マンション 管理会社VS自主管理』澪標