自動火災報知設備は火災やガス漏れなどの災害を感知し、音響装置によって周知させる消防用設備の一つである。火災報知器とも呼ばれる。今回は、この設備がどのように私たちの生活を守っているのか、また、どんな建物に設置が義務付けられているかをお伝えしたいと思う。
自動火災報知機とは
自動火災報知設備とは、建築物などで発生した火災等を「感知器」によって感知し、「非常ベル」などによって建物内や周囲に火災の発生を知らせる設備である。火災報知器は非常に多くの建物に設置され、人命を守ってきたと言える。火災が発生した際はいち早く察知し、消火と避難を始めることが最も大切だからである。
自動火災報知設備を構成する部分
次に、自動火災報知設備はどのような部分で構成されているのかを確認する。自動火災報知設備は主に次の4つの機器を組み合わせたものをいう。
① 感知器
火災が発生した際、熱、煙、光などの反応が起きる。その反応を感知するのが感知器である。感知する反応によって分類すると、(a)熱感知器、(b)煙感知器、(c)炎感知器の3つに分けるとこができる。感知不全や誤作動を防ぐために、設置する場所によって感知器を選ぶ必要がある。例えば、排気ガスが多く発生する駐車場には煙感知器を設置できない。車が出す排気ガスを、火災と誤認してしまう可能性があるためである。また、火災の感知をより正確なものとするために複数種の感知器を設置する場合もある。通常は目立たない形で天井に設けられることが多い。
②発信機
感知器と違い、目につく形で配置されているのが、この発信機である。この発信機は、のちに述べる音響装置(非常ベル)を鳴らすためのスイッチであり、火災の発生を周囲に知らせるためのものである。日常では「非常ベルのボタン」などと言われている。
③受信機
感知器や発信機から発信された信号を受信し、非常ベルなどの音響装置に信号を送るのが受信機である。火災が発生した場所を表示したり、音響装置を一時的に止めたりする操作盤のとしての役割もある。スプリンクラーなどの消火設備や防火戸などの防排煙設備を起動するための信号を発信することもできる。人間の身体で例えるならば、感知器や発信機が目や耳といった感覚器官であり、その信号を受け取り指令を発信する脳の役割をするのが受信機である。通常は防災センターや警備室や職員室など普段人が常駐している場所に設置されている。
④音響装置
火災などの発生を知らせる非常ベルは地区音響装置という。防災訓練などの際に最初に鳴るベルは建物内の各地にある非常ベルから発せられている。発信機とセットで設置されていることも多い。また、非常放送設備を別途つなげてあり、その音声が発せられる場合もある。
火災が発生した際の動作
火災が発生した際の動作を確認する。まず、火災によって発生した熱・煙・炎(光)のいずれか(もしくは複数)の現象を感知器によって感知する。感知器は電線によって火災発生の信号を受信機に伝える。受信機は火災が発生した場所を表示板に示すとともに建物内の各場所に配置した非常ベルを鳴動させる。
さらに、受信機に他の消火・防煙・排煙設備等を接続することでそれらの起動を感知器と連動させることができる。例えば、火災の発生の感知と同時に自動でスプリンクラー設備を起動させたり防火扉を締めたりすることができる。非常放送設備を連動させれば自動で避難誘導の放送を流すこともできる。
設置義務と点検の義務
自動火災報知機は設置基準がかなり複雑である。建物の用途ごとに、延べ面積(各階の床面積の合計)の大きさによって設置が生じる。以下の表は、設置義務が生じる最小延べ面積を表している。また、建物の構造、階数や建物の使われ方などによって、さらに設置基準が厳格化される。注目すべき点は、特定防火対象物などの人が出入りする建物では比較的小規模な建物でも設置が義務付けられていることである。避難が困難になりやすい病院やホテルなどの建物では、面積に関わらず全ての建物で設置が必要となっている。
※グレーの背景の防火対象物は特定防火対象物である。不特定多数の人が出入りする場所や、避難が困難な場所が該当する。
また、自動火災報知設備などの特定の消防設備には、6か月に1回の機器点検(外観点検や機能点検等)と1年に1回の総合点検が必要である。さらに、点検結果の報告の義務もある。これは建物の関係者(所有者やその従業員など)が消防長に提出する。
まとめ
- 自動火災報知機とは火災の発生を自動で感知し、館内に知らせる設備である。
- 感知器、受信機、発信機、非常ベルなどで構成される。
- 多くの建物で設置が義務付けられており、定期点検と点検結果の報告の義務がある。
自動火災報知設備は火災の発生を感知し知らせてくれる。火災の発生時はいかに早く行動をするかが大切である。人命や財産を失ってしまわないように点検や整備は怠らないように気を付けていきたいものである。
参考
工藤政孝編著『わかりやすい!第4類消防設備士試験』弘文社