防災管理者とは、火災以外の災害時の対策や活動に責任を持つ役職である。防火管理者の災害版で、これらは重複して選任されなければならない。地震や毒劇物の流出に備え、衆人の命を守る役割を担わなければならない防災管理者の責任は非常に重い。
防災管理者とは
防災管理者とは建物の火災以外の災害の被害軽減を目的とし、被災時の計画作成や避難誘導等の活動を担う責任者のことである。消防法上では、第36条でその存在について規定されており、第8条を始めとする防火管理者に関する規定の「防火管理者」を「防災管理者」に読み替える旨が明文化されている。文字通り防火管理者の防災バージョンと考えていただければわかりやすい。ここで言う火災以外の災害とは、地震や毒劇物の拡散等のことをいい、それらは一般的に大勢の人の避難が必要となり、防災管理者に求められているのはその避難誘導である。そのため、防災管理者の設置義務が課される建物は必然的に大勢の人が集う施設となっている。防火管理者と同じく基本的には、各自治体(もしくは自治体に委託された組織)の行う講習を受講しなければ防災管理者となることはできない。
設置が義務となる条件
先述のとおり、防災管理者の設置が義務付けられるのは人が大勢集まる施設であり、そこにおいて一定の面積要件を超える建物が対象となる。これについては消防法施行令第4条の2の4で定められている。同条は自衛消防組織の設置要件としての条文であるが、同第46条にて防災管理が必要な建物として同条文を適用することとされている。具体的には以下の条件のうち、一つでも当てはまれば設置対象である。
① 「テナントなしマンション」、「倉庫」、「航空機の格納庫」以外の建物(以下、「対象用途」)で、以下の延べ面積と階層を満たした場合。
② 複数の用途が混在した建物で、そのうち対象用途の合算面積と階層が以下の条件を満たした場合。
③ 地下街で、延べ面積が1,000㎡以上のもの
地下街を除いて面積10,000㎡より該当になることからわかるとおり、対象となる建物の規模は大きい。ちなみに目安としてお伝えしておくと、東京ドームのグラウンド部分の面積は約13,000㎡である。階層が高いほど、衆人の避難誘導が困難になるため、面積条件も厳しくなる(小さい面積でも防災管理者が必要になる)仕組みだ。
防火管理者との重複選任
防災管理者は、防火管理者が重複することと法律により規定されている(消防法第36条)。防災管理者の設置が義務付けられる建物に防火管理者が必要とされないことは現実的にはほぼなく、選任された者は防災と防火に関わる消防計画を作成しなければならない。防災管理に関わる消防計画は、被害の想定等を明文化しなければならないため、通常の消防計画よりも作成ハードルは高くなる。また、防火管理者と同じく、防災管理者が必要とされた建物に入居する各テナント毎に選出することが基本となる。対象となる建物は延べ面積が大きいことから、テナントの数も増えやすく、たとえば100のテナントが入居するショッピングセンターなら100人の防災管理者兼防火管理者が求められることになる。また、防災管理者も防火管理者と同じく統括防災管理者が存在し、建物全体の防災管理を司る。統括専用の消防計画も別途作成する必要があるが、統括に限らず一般的に防災の消防計画には防火の消防計画も含まれるため、防火と防災で消防計画を分けて届出する必要はない。
責任は対自然災害だけではない
防災管理者は、火災以外の災害、すなわち地震や毒劇物の拡散等の対策を講じる存在だとは冒頭で述べたとおりであるが、毒劇物の拡散等とは流出事故のようなものだけではなく、対テロも想定されている。要するに衆人の避難誘導が必要なものは全て責任を持たなければならないということであるが、対テロとまで聞くと、その責任が俄然大きいものだと感じずにはいられない。当方には危険物取扱者や毒物劇物取扱責任者も在籍しているため、地震対策に収まらない、毒劇物管理に関する悩みについても問い合わせいただきたい。
参考
東京消防庁「防災管理制度について」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p07.html