災害発生時に、個人の位置情報を利用して個人毎に避難情報を提供する仕組みが官民の防災団体「AI防災協議会」により開発された。AIをはじめとするITの開発が進む中、防災業界での技術革新について関心が集まっている。
ニュース概要
災害発生時に、スマートフォン等の位置情報データをもとにして、その場所から避難するべきかや、避難場所等の情報をAIが判断して個人に伝える仕組みを官民の防災団体「AI防災協議会」が開発した。この仕組みは、土砂災害や洪水等の危険が迫る時、気象庁の防災情報や地方自治体により制作されたハザードマップの情報等をもとに、避難情報をLINEアプリを通じて通知するものである。これまで防災情報をアプリで提供する事例はあったが包括的な情報に限られ、利用者一人一人に合わせて避難を呼びかけるサービスは初めてではないかと、開発した防災団体は述べている。
「AI防災協議会」とは
同アプリを開発したのはIT企業や自治体、それに防災の研究機関などから構成される「AI防災協議会(以下、AI防災)」。AI防災は2019年6月にAI・SNS 等をはじめとする先端技術・IT インフラを活用した防災・減災を目的として設立された組織で、事務局は一般財団法人情報法制研究所である。主要メンバーとして、株式会社ウェザーニューズ、損害保険ジャパン日本興亜株式会社、SOMPOリスクマネジメント株式会社、東京海上ホールディングス株式会社、ヤフー株式会社、LINE株式会社、等の日本の名だたる企業が連携する組織である。
今後の展望
今後も防災業界へITを活用したサービスの流入と技術革新は続くであろう。
AIという言葉が一般的に認知されるようになって久しい。人間の知能を模倣し、人に代わる働きを担うことを目指す技術であるAIすなわち人工知能の研究は日進月歩で進み、世界中の研究機関がその開発に乗り出している。現在のところ、われわれの生活上で見かけるAIは、知能というよりも情報処理機関ともいうべきものであるが、やがては本当に人間のように自律して判断する「知能」を持つようになるかもしれない。
開発されたAIやITの技術が、真っ先に防災業界で活躍することはまずないだろうが、順次その恩恵を受けることは間違いないだろう。防災資器材や備蓄品をITで管理することに始まり、その量や内容まで個人に応じてパーソナライズされた結果がすぐに得られる時代も来ると考えられる。以前では考えられなかったような高機能のサービスが安価に利用できる環境が整いつつある現状に続き、AIやITの技術が用意された後に残された最大の課題は、そのような技術の利用をデジタルアレルギーと言われることのないよう如何に普及させることにあるかであろうか。
参考
NHK「災害時 AIが位置情報から避難を判断 LINEで通知 官民が開発」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210218/k10012873181000.html
丸山俊一「AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望」NHK出版