電気設備の事故を防止するためには定期的な点検と補修が欠かせない。
具体的には普段電気を使用しているビルや工場などを停電させての設備点検が挙げられるが、停電を伴う点検は法律的にはどのような位置づけであり、点検内容はどのようなものがあるのかを検証する。
電気事業法第42条の記載
高圧設備や一定規模以上の非常用発電設備を設置する場合、電気設備の基本法律である「電気事業法」に規制される。特に、法定点検に関する項目は電気事業法の第42条が適用される。
その中では、「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、主務省令で定めるところにより、保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定め、当該組織における事業用電気工作物の使用(第五十一条第一項の自主検査又は第五十二条第一項の事業者検査を伴うものにあっては、その工事)の開始前に、主務大臣に届け出なければならない。」とされている。
電気工作物とは、大きく高圧受電設備などの電気設備のことであり、使用開始前までに、「保安規定」と呼ばれる事業所ごとに使用される保守点検の基準を届け出なければならないとされている。
つまり、電気設備の法定点検は事業所ごとの「保安規定」に基づいて行われており、ここに記載されている点検を行う必要があるということになる。
主にどのような点検が必要か?
保安規定に準じた点検と言っても、一般的な点検項目はある程度決まっている。
最も一般的なものは年一回の停電点検だ。これは、日常点検ができない各所の絶縁抵抗測定や、トランスの絶縁油の劣化試験、引き込みケーブルの水トリー劣化判定などが含まれる。
また、非常用発電設備に停電時自動切換えが行われる工場やビルにおいては、停電時の非常発電機への切り替えシーケンス試験なども含まれる。
一般的には法定点検は停電点検であるが、保安規定に記載のある日常の試験や点検、巡視点検なども法定点検に含まれることになる。
電気主任技術者が制定する保安規定に準じた点検
法律的に、電気設備の点検内容の基準となる保安規定だが、ビルや工場で任命された電気主任技術者が制定する。
その際に、ビル特有の理由から通常の保安規定以外の項目を追加することや、最新の装置を導入するため、点検項目を削除するといったことが行われることがある。
特に近年ではIoT機器や遠隔監視などが発達してきたことにより、一か月に一回の巡視点検を常時監視による点検記録の保管として現地での点検を削除するといったこともなされている。
事故が起こることを防ぐためには、より詳細な点検を行うことは重要ではあるが、点検にかけられる費用や人工も限られているため、業務効率化の観点から様々な手法がとられている。それらを可能とするのが、電気事業法による保安規定の届け出である。
法律的に細かい規定があるわけではなく、事業者が自主的に電気の安全を担保できるシステムが電気事業法には存在する。
法定点検は基本的には停電を伴う年次点検
最終的にはどのようなものが電気設備における法定点検なのかということだが、停電を伴う年次点検という認識でほぼ間違いがないと考える。
どうしても絶縁抵抗測定や高圧変圧器の点検は、停電を行わなければ点検することができない。これらの点検は通常の電気が使用されている状態での監視装置も各メーカから販売されているが、停電点検ほどの精度が出ておらず、停電による点検が最も安価で確実というのが実情だ。
停電点検における高圧盤内の清掃なども行わなければならない整備の一つであり、その際に様々な停電点検を行うのが効率的にもよいというのは、古い時代から変わっていない。
こうした停電点検における法定点検は、今後も変わらずに続いていくものと考えられる。
まとめ
電気設備の停電点検は、ビルや工場といった従来の電気設備の他にも、近年では太陽光発電所や風力発電所などが増加し、それらの設備にも同様の点検がある。
今後、自然エネルギーの発電所が建設されることで、電気設備の停電点検における項目も、それらの設備への適用はどのようにしたらよいのかを常に考えておく必要があるだろう。
電気設備は設置した後には、設置者に保安の義務があるため、点検項目を抑えておくということは大変重要であるといえる。
参考
電気事業法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339AC0000000170
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