入退室管理システムは、ICカードや顔認証などによって扉などの解錠操作を行うシステムである。解錠の際に、同時に本人照合を行うため、セキュリティ面で特に優れている。また、解錠操作も簡単なため、医療・介護の分野をはじめとして、さまざまな施設で利用が広がっている。
目次
はじめに
入退室管理システムは、オフィスビル、工場、医療現場など様々な場所で導入されている。また、最近では様々なオプション機能をもったシステムも登場している。今回はこの入退室システムとは何かについて、また、導入のメリットについて解説する。
入退室管理システムとは
入退室管理とは、施設や部屋の出入りを制限することをいう。必要のない人間が内部に入って、盗難や破壊を防ぐことを目的としている。自宅の扉を施錠することも入退室管理の一つと言える。
入退室管理システムとは、入退室管理を機械で行うものである。平時は扉を施錠しておき、ICカード等によって開錠を行う。従来の鍵を使った入退室管理と違うのは、「だれが」「いつ」「どの扉を」開錠するかを個別に設定することができることである。例えば、ある事務所においては次のような管理をすることができる。
(1)来訪者は、10:00〜16:00の間にロビーと面会スペースにしか入室できない。
(2)従業員は、役員室以外の部屋に、いつでも、入室できる。
(3)役員は、いつでも、どの扉でも入室できる。
同様の管理を行う際、これまでは入口に受付や警備員を配置したり、役員用の鍵を用意したりしていた。
また、入退室システムでは開錠と同時に「だれが」「いつ」「どの扉を」利用したかを記録する。よって部外者の侵入だけでなく、内部関係者の不正利用を抑止することが出来る。
認証方法
入退出システムでは、一般的な鍵はあまり用いられない。代わりに次のような認証方法を用いている。
①ICカード認証
現在使われている認証方法で広く使われているのがICカードである。名札や社員証などと一体になったものもある。
②顔認証
カメラに顔を写すことで認証する。顔認証のメリットは、鍵やICカードの様に置き忘れたり紛失したりといったことがない点である。また、鍵やICカードのように、盗難される心配がないため、セキュリティが高いといえる。扉を自動ドアにすると、両手が塞がっていても出入りができる。
③生体認証
指紋認証、静脈認証、虹彩認証などの生体認証を用いることで認証させるものである。顔認証と同様に、置き忘れや紛失の心配がなく、盗難の心配がないためセキュリティが高い。
④QRコードやバーコード
QRコードなどをリーダーに読み取らせることで認証させる。印刷した紙やメール等のデジタルデータで発行できる。発行が簡単にできる反面コピーも容易なため、来客パスなどの一度きり、もしくは一日限りの認証として使われることが多い。
⑤暗証番号
テンキーで暗証番号を入力させる方式。暗証番号が漏洩すると誰でも簡単に入れてしまうというデメリットがある。ICカードと暗証番号の両方がないと解錠しないという方式が採用されることもある。
その他の機能
ここまでお伝えしたのは、扉を開けるという、入退室管理システムの最も基本的な機能である。しかし、入退室管理システムは他にも下記の様な機能を持たせることができる。
①2名照合
1名だけでは入室できず、2名の認証が必要となる入室方法。重要室へのセキュリティに最適。
②アンチパスバック
入室履歴のないICカードを使用して退室することを防ぐ機能。共連れなどを防止できる。
③在室人数カウント
在室人数をカウントして、部屋の混雑状況を分かりやすく表示する機能。部屋ごとに設定された上限を上回る人数が滞在することを防ぎ、密集状態を防ぐ。
④自動照明OFF
在室人数をカウントし信号を出力できるため、在室人数に応じて照明や空調のオン・オフを制御することができる。
⑤警備連動
建物の警備セットを行える機能。最後の在室者となった場合には警戒セットを行うよう指示がでるなど、警備セット忘れを防ぐことができる。
⑥遠隔解錠・遠隔受付
遠隔操作で鍵を解錠できる機能。在宅や出社していない場合でもソフトウェアを操作することで解錠や権限の付与などを行うことができる。
⑦勤怠管理
勤怠管理のシステムと連携する機能。施設に入室している時間を勤務時間とするという設定や、一日の出社時間と退社時間を記録して、サービス残業を警告するなどの設定ができるものもある。
医療・介護施設に設置するメリット
これまで、入退室管理システムは、オフィスビルや工場、倉庫など、大規模な建物に設置されることが多かった。しかし、近年は、IoT化、DXの推進、働き方改革などの後押しもあり、比較的小規模な建物にも設置されることが増えた。ここでは、医療・介護施設で入退室管理システムを導入するメリットを紹介する。まずは、扉の解錠操作が簡単になることが挙げられる。認証方式によっても若干変わるが、ICカード認証ならばかざすだけ、顔認証ならば2秒から5秒ほどで認証できる。感染予防にも役立つ。ICカード認証や顔認証は非接触で認証できるので、扉の開閉を自動にすれば、ウイルス等の感染リスクを減らすこともできる。また、エリア分けが簡単にできる。医療・介護施設では、利用者が行動可能なエリアと、従業員しか入ってはいけないエリアが必ずある。しかし、従業員が鍵を常に持っていて、通る度に解錠するというのは現実的ではない。従来、その入退室管理はどうしていたのかというと、暗証番号で行なっていたところが多かった。しかし、暗証番号は盗み見などのリスクが常にあるため、セキュリティとしては弱くなってしまう。この点、入退室管理システムならば、セキュリティを保ったまま、入退室がスムーズに行える。
まとめ
入退室管理システムはICカードや顔認証などによって本人確認を行いながら開錠作業を行うシステムである。システムを導入することによって、事業者は高いセキュリティを維持することができるだろう。IoT化やDXの推進の影響もあり、医療・介護の分野をはじめとして、さまざまな施設で利用が広がっている。事業者の方でまだ導入されていない方は、一度検討してみてはいかがだろうか。