設備 最終更新日: 2023年06月24日

無停電電源装置はなぜ必要なのか?

無停電電源装置は、今やオフィス環境ではなくてはならない設備である。パソコンで仕事中に停電が起きてしまった場合、ローカル環境で作業を行っていると作成中のデータは保存されずに喪失する。それだけでなく、事業の根幹システムのサーバーが停止し、顧客や生活環境に重大な悪影響をもたらすこともありうる。この様に急な停電等で電源の供給に異常がきたした際に不可欠なのが無停電電源装置である。更にこの装置はデータのみならずPC等の精密機械をも守ることができる。

はじめに

無停電電源装置は一般に「UPS(ユーピーエス)」と呼ばれている。「Uninterruptible(無停電) Power (電源) Supply(供給)」の略称で、最後が日本語では「装置」だが、英語では「供給」となっていることがポイントである。UPSは“停電状態にならない”ためのものではなく“停電状態でも電源を供給する”ための装置なのである。

図1 小型無停電電源装置
https://www.monotaro.com/g/01013482/

この記事では無停電電源装置(UPS)の概要とその役割や使い方について解説する。

無停電電源装置(UPS)とは

UPSとは、身のまわりのコンセントから使っている電源が停電等、何らかのトラブルで適正に供給されなくなった際に電源の品質を落とさないで供給し続けるための装置である。おおもとの電源と負荷(電気的なエネルギーを受けて何かを動かしたりする消費する物の総称)の間に入れ、UPS内にある蓄電池に貯えた電気エネルギーを停電等の際に利用するものである。
主な機能としては、停電が起きた場合にコンピューター機器を安全にシャットダウンさせるまでの間の10分~15分間の電源を供給することが可能である。
UPSの機器の構成(常時インバータ方式)として、①交流から直流に・②直流から交流に戻すための電力変換装置、“UPSを利用する回路”と“交流エネルギーを直接負荷に送る回路”を切り換える為のスイッチ、①と②の電力変換装置の間に設置する直流エネルギー蓄積装置を組み合わせ、常用交流電源が異常の時に負荷電力の連続性を確保する電源装置である。

図3 UPSの装置の内部構成
https://www.ntt-f.co.jp/service/ups/pdf/kyuden.pdf

なお、停電対策の装置というと非常用発電機が知れているが、共に停電時に活躍する機器でもUPSとは設置する目的が全く異なる。UPSに対して、非常用発電機は停電時に発電して負荷に“長時間(80時間等)”電源を供給するものである。発電し電源の供給を開始するまでに1分程度を要するためPCを安全にシャットダウンする余裕がない。よって、非常用発電機は長時間の停電対策には有効だが、UPSのように1分以内の電力停止である“瞬時停電(瞬停)”や最大2秒間の電圧低下である“瞬時電圧低下(瞬低)”などの電圧異常や周波数異常には対応できない。
非常発電機が供給する電源は電力会社からの商用電源とは違い電圧や周波数が安定しないことが多々ある。

無停電電源装置の役割

突然の電源喪失が起きた場合に大きなダメージを受ける機器が、現在のオフィス環境には多く存在している。その代表がパソコンやサーバーなどのコンピューター機器である。停電(瞬停・瞬低含む)や電圧の変動などの電源故障で、これらの機器がシステムダウンすると作成中のデータの損失やファイル破壊、記憶装置の損害などが発生して業務を停止させる恐れがある。復旧にも膨大な時間とコストがかかることが想定され、経営活動に深刻な影響を与えることになるだろう。
このようなリスクを避けるために必要不可欠なのが、UPSによる電源バックアップである。UPSは電源トラブルが起きた際に、安全にコンピューター機器をシャットダウンするまでの間の電気を供給し、データの損失やハードウエアの破損を防ぐ重要な役割を果たす。

図4 UPSを使用の有無
https://www.cbre-propertysearch.jp/article/office_electricity_reliability-vol3/

無停電電源装置の使い方

UPSとはコンピューター機器を安全にシャットダウンするためのバッテリー装置だが、UPSの大きさは接続する機器の数や種類、電気容量や時間をバックアップするのかによって決まる。例えば、従業員数20人程度の小規模なオフィスで2、3台分のサーバーやルーターを15分程度バックアップするとする。その場合1,000~1,500VAのUPSがあれば補うことができる。
形態は机の下などに置けるような小型の縦置きのタワーモデルや棚に搭載できるラックマウント型がある。このサイズのUPSは100Vの電源さえあれば基本的にどこでも設置可能であり、企業が自ら用意し、サーバーやルーターなどの保護したいコンピューター機器に接続して使う。その接続した機器にUPSの電源管理ソフトウエアをインストールしておけば、停電などのトラブル発生時にUPSが探知してコンピューター機器にバックアップ電源を供給することができる。
大規模(従業員数50人から100人程度)なオフィスだとすると、その分バックアップするコンピューター機器も増える為、UPSの容量も大きくしなければならない。当然にUPS自体の大きさや重量も増え、それを設置するのに十分な場所や床の強度が必要である。データセンターや賃貸ビルなどに大型のUPSを設置するならば、通常の100V以上の電源を要するためオーナー側と電源設備設置の話し合いが必要となる。

まとめ

無停電電源装置(UPS)は精密な負荷機器やその中に内包するデータを電気トラブルから守るものであり、オフィス環境には不可欠な電気装置であることがお分かりいただけただろう。UPSを未設置の状態で電気トラブルが起きてテナントのPC等に不具合が発生した場合、建物の所有者や管理者は責任を追及されかねない。
反対にUPSを設置していればテナントは安心して仕事に打ち込め、信頼のおける建物として評価されると考えられる。

参考

「設備と管理」2020年6月号 付録
https://www.fujisan.co.jp/product/1497/b/1972962/

三洋電機株式会社 製品・技術情報サイト
https://techcompass.sanyodenki.com/jp/training/power/ups_basic/004/index.html

シービーアールイー株式会社
https://www.cbre-propertysearch.jp/article/office_electricity_reliability-vol3/